パススルーの意味と解説【M&A用語】
パススルーの意味と解説【M&A用語】
不動産投資に興味のある投資家の人にとって、課税所得はなるべくゼロにして、利益を最大化したいものです。昨今では実物不動産への投資以外の形態による不動産投資が増え、税金を安くする投資スキームに注目が集まっています。
ここでは、利益の最大化を実現するパススルー課税について解説します。
パススルーとは
投資ファンドが稼得したキャピタルゲインや配当等の利益に対し、その利益に直接課税するのではなく、利益の分配を受けた投資家(構成員)の所得に対して課税する方法をパススルーと呼びます。
パススルーは通常の株式会社に出資する場合には適用されません。TMK(特定目的会社)やLLP(有限責任事業組合)を対象に出資する場合のみ適用されます。
TMKとLLPについて
TMK(特定目的会社)とは、「資産の流動化に関する法律」に基づいて設立される法人(社団法人であり会社ではない)で、不動産などや債権など特定の資産を裏付けとした有価証券を発行するためだけに設立された、一種のペーパーカンパニーです。一定の要件下でだれでも投資家を募集できる、ほとんどの資産や財産権に投資することができるといったメリットがあります。
一方で、LLP(有限責任事業組合)は「有限責任事業組合契約に関する法律」に基づき、組合契約と登記のみで設立される法人格を持たない事業体です。その名のとおり有限責任なので債務の差し押さえが原則として個人に及ばず、出資者を集めやすいのが特徴です。また、LLPとして商業登記ができ、不動産の所有などもLLP名義で行うことができるというメリットがあります。
TMKとLLPには、投資できる財産や財産権の豊富にあること、また一定の要件を満たせばパススルー課税が適用され、税金が安く済むという共通するメリットがあるため、起業家や投資家から注目されています。
パススルーが適用される場合
先ほど触れたように、TMKやLPSなどに出資した場合、パススルー課税が適用されます。例えばファンドが投資した会社が1億円の利益を上げ、その利益を投資家に配当する場合、投資家個人(あるいは法人)に分配された利益に所得税のみ課税されます。投資家に利益の100%、すなわち1億円が配当され、所得税が50%とするならば、5000万円が手元に残るということになります。
ただし、TMKやLPPには運営に縛りが設けられています。先ほど投資家に利益の100%を配当する例を示しましたが、パススルーは利益の大半を配当しないと適用されないため、TMKやLLPの利益はほぼ内部留保できず、事業を大きくすることができません。
つまり、TMKやLLPはパススルーによって法人税は課税されないが、会社を大きくすることはできないというデメリットがあるのです。
パススルーが適用されない場合
通常の株式会社に出資する場合はパススルーが適用されません。例えば、普通の株式市場で株を買ったりした場合、投資した株式会社が1億円の利益を上げたとしましょう。1億円は法人税の課税対象となり、法人税率40%が課税されたあとに残る利益は6000万円となります。
さらに、課税後の利益6000万円を全て投資家に配当した場合、投資家個人の利益は6000万円になりますが、今度はその6000万円が株主個人の所得とみなされるため、所得税が課税されます。所得税率は50%なので、投資家個人の手元に残るのは3000万円です。つまり、普通の株式会社に投資した投資家個人が得る利益は、二重に課税(1億円の利益に対して70%の課税)されているということになります。
ただし、一つ例外があります。それは、「投資信託及び投資法人に関する法律」に基づいて設立される投資法人は、法人税法上は普通法人と扱われることです。ですが、「配当可能利益の90%超を分配する等の要件を満たす場合は、配当等の額を損金算入する」との取り決めがあり、条件を満たした場合には結果的に法人税は課税されません。
この処置はパススルーが適用された場合と同様です。
最後に
通常の株式会社に投資するか、TMK・LLPに投資するかでは、同じ儲けであったとしても投資家個人の手元に残る金額は大きく変わります。TMKにせよLLPにせよ、現在は知名度の低さがデメリットの一つといえます。
ただし、投資家にとっては税法上優遇されることにより利益を最大化できる可能性があります。起業家にとっては会社や組合、個人事業と併せて、事業を興すときの選択肢の一つとして検討する余地があると見て良いと思います。
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